「5000円払わないと自転車を返さない」杉並区の自転車撤去政策は本当に正しいのか

 先日、高円寺駅前で用事があり、東急ストアの脇の通行の邪魔にならない場所に自転車を2時間ほどとめていたところ、杉並区と契約した協和産業職員によって撤去・保管されてしまった。なお協和産業については、社長ら2人が昨年10月、田中良区長の政治団体が主催するゴルフコンペに参加しており、公私混同した関係が疑われる。

 この撤去事業が本当に市民のためなのかどうは大変疑問があるが、ともあれ保管されている自分の自転車を引き取るべく、高円寺集積所に行った。そこで自転車はあったのだが、協和産業の職員は次のように説明した。

・ (撤去・保管)手数料として現金5000円をこの場で払う必要がある。
・ 手数料を払わないと引き取りはできない。
・ 保管できるのは1ヶ月間半である。それをすぎれば処分する。

 自転車の引き取りは「5000円」と引き換えである――そういう説明だったのだ。
5000円の手数料は条例(杉並区自転車の放置防止及び駐車場整備に関する条例)で定めた「撤去、保管等に要した費用」であり、区長の請求によって区に払うべきものである。
 
 金を払わないと自転車を返さないというやり方に疑問を感じた筆者は、職員にこう伝えた。

「手数料を払う必要があるのであれば区に直接払いたい。だからその方法を教えてほしい」

 協和産業の職員は、「それはできない」と繰り返し、根拠をただすと「わからない。、区に直接尋ねてくれ」と言った。自転車の返還は得られなかった。処分されるのを避けるため、「預かり証」を書いてもらった。この時点でもやはり「1ヶ月半以内に取りに来てほしい」との説明を受けた。つまり、1ヶ月半以内に5000円をつくってもってこいというわけだ。まるで質草にもでとったかのような扱いなのだ。

 その後、自転車対策室に電話で問い合わせ、「直接区に払いたいので私あての納付書をつくってほしい」と伝えた。当初「できない」といっていた職員は、いったん「会計課に聞いたらできるのだが、だれにあてて作るのかが不明なのでできない」とよくわからない説明をした。そして「私が払うというのだから、私あててでよい。自転車の所有者である。ちゃんと確かめてほしい」ともう一度いい、「追って連絡する」と相手は引き取った。

 さらにしばらくしてきた返事はこういうものだった。

 「区の職員が集積所に立ち会って、5000円を協和産業に払うというのではだめか」

 区に払うべき金を区に払えないとあくまで言うのだ。いったいどういうわけかと不審に思った筆者は、条例をたしかめることにした。

第14条 区長は、第12条又は前条第2項の規定により自転車を撤去したときは、現場において撤去した旨を公示し、当該自転車を一定の期間保管するとともに当該自転車の利用者等の確認に努め、利用者等が確認できた自転車については、その利用者等に対し、速やかに引き取るよう通知するものとする。
2 区長は、前項の措置を講じた後、引取りのない自転車及び利用者等が明らかでない自転車については、区において処分する旨の告示をした後、当該自転車の処分をすることができる。
3 前2項の規定にかかわらず、区長は、撤去した自転車が明らかに自転車としての機能を喪失していると認められるときは、直ちに、当該自転車を処分することができる。
(費用の徴収)
第15条 区長は、第12条又は第13条第2項の規定により、自転車を撤去したときは、撤去、保管等に要した費用として当該自転車の利用者等から、1台につき5,000円を徴収することができる。

 あれ?――と思った。条例をどうみても、「5000円を払わないと返さない」とは読めない。逆に、「速やかに引き取るよう通知するものとする」とある。手数料については、別の15条で、区長は利用者等から徴収することができるとある。処分については「引き取りのない自転車」と「利用者等が明らかでない自転車」を、区において告示した上で処分できるとある。

 つまり、引き取りの問題と手数料の問題は完全に規定されている。この条例に従えば、自転車はすみやかに所有者の筆者に返還されなければならない。そして区長は、手数料を請求したければ筆者に請求すればよい。そういう流れにならなければならない。

 ところがじっさいは、区長は手数料の請求をしない一方で、自転車を返そうともしない。さらに1ヶ月半をすぎれば処分するぞといっている。ほとんど脅しである。自転車を使えないという不便が続いている。アルバイト代がまだ払われない。手持ちの金が足りない。バイトにいかなくてはいけないが自転車がない。そういう人もいるにちがいない。その場合、だれかから借りてでも5000円を工面しろということだろう。

 しかし本当にそんなことが区にできるのか。しかも誰が金を払うべき者が誰なのかがあいまいだ。「利用者等」とあるだけだ。

 「自転車を返してほしければ金を払え」という今の運用が、条例の趣旨の大きく超えている可能性がある。

 そこで、18日、以下次の文書をファクスで区に送った。

杉並区長御中
自転車撤去保管業務担当部署御中

 高円寺集積所において杉並区が保管する私が所有する自転車(防犯登録荻窪●●)について、以下のとおり申し入れます。

第一 経緯
 同自転車は高円寺駅北側の東急スーパー脇に駐輪していたところ、区が撤去・収集等の業務を契約する協和産業職員によって撤去され、高円寺集積所に保管された。駐輪した時間は約2時間、駐輪位置は公道と商業用地の境界付近で、前輪は境界マークの内側(商業用地側)に入っていた。撤去された旨の公示はなかった。
 近くの交番の警察官に尋ねて、撤去された可能性があることを知った私は、高円寺集積所に向かい、自分自転車が撤去・保管されている事実を確認した。
 協和産業職員は、手数料5000円を現金で支払わなければ自転車を返還しない旨説明した。これに対して私は、区に直接払いたいのでその方法を教示してほしいといったが、ここで払うしかほかに方法はないとの説明だった。すみやかに引き取ってほしいとの教示はなかった。
 保管について協和産業職員は、「1ヶ月半保管する」と説明した。手数料を集積所において現金で払わなければ返還に応じず、かつ1ヶ月半をすぎれば処分されるものだと私は理解した。
 やむなく私は、自分の自転車が保管されている旨の「預り証」を書いてもらい、区に直接確認するむね伝え、徒歩で帰宅した。
 区に対して、手数料の請求を三宅にするよう求めたが、5月18日現在、区は直接請求するにいたっていない。自転車の返還もなされていない。

第二 自転車撤去・保管について、条例の趣旨に反した運用がなされている
 この対応には、いくつか条例の趣旨に反したものがみられる。
 「杉並区自転車の放置防止及び駐車場整備に関する条例」は次のように定めている

第14条 区長は、第12条又は前条第2項の規定により自転車を撤去したときは、現場において撤去した旨を公示し、当該自転車を一定の期間保管するとともに当該自転車の利用者等の確認に努め、利用者等が確認できた自転車については、その利用者等に対し、速やかに引き取るよう通知するものとする。
2 区長は、前項の措置を講じた後、引取りのない自転車及び利用者等が明らかでない自転車については、区において処分する旨の告示をした後、当該自転車の処分をすることができる。
3 前2項の規定にかかわらず、区長は、撤去した自転車が明らかに自転車としての機能を喪失していると認められるときは、直ちに、当該自転車を処分することができる。
(費用の徴収)
第15条 区長は、第12条又は第13条第2項の規定により、自転車を撤去したときは、撤去、保管等に要した費用として当該自転車の利用者等から、1台につき5,000円を徴収することができる。

 つまり、職員は保管中の自転車をすみやかに引き取るよう「利用者等」に通知せよとする規定はあるが、手数料を払わな限り返還しなくてよいとの規定はない。また処分についても、所有者がわからない場合や引き取りにこない場合にのみできるのであって、所有者がわかり、引き取りの意思を示しているにもかかわらず、手数料を払わないなどの理由で返還に応じてもらなえいために一定期間がすぎた自転車を処分してよいとの根拠はない。

第三 申し入れ事項
 条例にのっとって、以下のとおり申し入れる。

1 撤去・保管手数料の徴収が必要だと区長が考えるのであれば、15条の規定にもとづき、私にあてて納入通知などで請求してください。その場合、理由を付した書面を示してください。また行政不服審査法等にもとづく抗弁手続きを教示してください。

2 手数料を払わないと引き取りに応じないむね集積所の職員は私に説明しましたが、条例上はそのようなことができるとの規定はありません。保管中の私の自転車をすみやかに引き取りたいので、ただちに引き渡してください。また手数料に関する問題解決がいかに長引いたとしても、私が所有権を放棄しない限り、当該自転車の処分はしないでください。

以上

2018年5月18日

三宅勝久
杉並区阿佐ヶ谷南