4月17日15時東京地裁419号法廷/大熊昌巳自民党杉並区議の政務活動費返還請求訴訟、結審予定

 4月17日15時から、東京地裁419号法廷で、大熊昌巳自民党杉並区議の政務活動費返還請求訴訟の第10回口頭弁論があります。結審予定です。弁論をひかえて最終準備書面をきょう提出しました。ご覧ください。

 平成28年(行ウ)第281号 政務活動費返還請求事件
原告 三宅勝久ほか5名 
被告 杉並区長
2018年4月17日

最 終 準 備 書 面

東京地方裁判所民事第51部御中

                    原告 三宅勝久ほか5名
                    
第1 総論
(1) 政務活動費の範囲について
 地方自治法100条14項に規定された政務活動費は、「議員の調査研究、及びその他の活動に資するため必要な経費の一部」として認められた補助金の一種であり、政務活動以外の経費にはいっさい支出することができない。 「杉並区議会の会派及び議員に対する政務活動費の取り扱いに関する規程」(乙2、以下「政務活動費に関する規程」という)第2条第1項には、政務活動費が使えないものとして、次のとおり例示している。

1 選挙活動に関する経費 
2 政党活動に関する経費
3 後援会活動に関する経費
4 交際費(慶弔費、せん別、病気見舞等)に関する経費
5 飲食(会議等を主催する場合の茶菓及び区政に関わる諸団体が主催する会合に伴うものを除く。)に関する経費
6 条例9条1項に定める政務活動(略)の目的に合致しない個人的技能の習得に関する経費
7 日常的に使用する自動車の購入及びリースに関する経費
8 自動車の維持管理(公租、車検、保険、修理)に関する経費
9 その他政務活動の目的に合致しない経費

  これらは(「9」を除く)、政務活動費の使途が認められない活動の例示にすぎない。地方議会議員の活動には多種多様なものが含まれており、明記された種類の経費以外であればすべて政務活動費の支出が可能である――との解釈は誤りである。政務活動費の支出が認められるのは、政務活動のなかでも、公金からの支出が許されるだけの実質を伴い、さらに必要かつ合理的な活動と認められる場合だけである。
 そして、政務活動費以外の経費が混在する場合、または政務活動以外の性格を併せ持っている場合は、按分その他の方法で政務活動に関する経費とそれ以外の経費を区分しなければならない。、「政務活動費に関する規程」第2条第2項が規定するとおりである。

(2)按分原則について
「政務活動費に関する規程」の別表によれば、事務費のうちインターネット接続料については、「実態に即して按分する」と定めている(乙2、4頁)。また広聴広報費のうち「印刷・製本費及び広報紙等送料」と「ホームページの作成及び維持管理費」についても、同様に「実態に即して按分する」と規定している(乙2、3頁)。議員が作成・配布する広報紙等やホームページというのは、その性質上、政党活動や後援会活動、選挙活動を含む多種多様な活動の要素を併せもっているが、一般的にその明確な区分は困難である。すなわち、ここでうたわれている「実態に即して」の意味は、政務活動とその他の活動を明確に区分する作業がそもそも困難であることを前提にして、個別の事情を考慮しながら、社会通念上相当な割合で按分せよという意味に解釈すべきである。  
 上の解釈が正しいことは、「政務調査費検討会報告書」の記載によっても裏付けられている。同報告書には、「按分の原則」としてこう記載されている。
「政務活動費の支出に当たっては、調査研究活動とそうでない部分とを合理的に区分することが困難な場合には、社会通年上相当な割合による按分をして、政務活動費に資するために必要な費用の金額を確定しなければならない」(甲46、4枚目)
 また、「政務調査費検討会報告書」は「按分原則の基本的考え方」と題する一文のなかで、以下のとおり青森地裁2006年(平成18年)10月20日の判決を引用している。
「議員が政務調査研究活動に資するために必要な費用として支出したことについて資料を提出せず、これを補足する具体的な説明を行わない場合には、その金額や使途からみて資料の提出や補足する説明を行うまでもなく政務調査費であろうと社会通念上推認されるような支出(例えば政務調査研究活動に資する費用とされ得る社会通念上推認されるような範囲内の金額の電話料金、文房具代金、郵便代金等)を除き、これを正当な政務調査費の支出であると認めることはできない。調査研究活動とそうでない部分を合理的に区分することが可能であるにもかかわらずそれをしておらず、その金額や使途からみてその大半が政務活動費以外の活動に使用されていると社会通念上推認されるような場合においては、支出額全体が政務調査費の使途基準に合致しないものと認めるのが相当である。なお合理的な区分が困難である場合には、社会通念上相当な割合による按分をして政務調査活動に資するために必要な費用の金額を確定するのが相当である。」(甲46、5枚目)
 そして、この引用に続いて「…青森地裁判決や学識経験者等の第三者の意見を参考にして、より詳細な経費按分等の基準を設定する。」と述べている(同)。 
 政務活動とそれ以外の経費が混在し、合理的な区分が困難な場合には「社会通年上相当な割合」による按分をするというのが、杉並区における政務活動費の按分の基本的考えであり、広報紙の作成・発送やホームページ管理に関する経費に対する使途基準も、この考えの上に立っていることは明白である。
 それでは,合理的な区分が困難な場合における「社会通念上相当な割合」とはどの程度の割合だろうか。この点について以下主張する。
 議員活動は多種多様であることを考えれば、特段の事情がない限り上限2分の1程度というべきである。「政務活動費に関する規程」は、固定電話代や事務所費については2分の1以下の按分を定めているが、これは杉並区における社会通念上相当な割合の按分とは2分の1であることを裏付けている(乙2、4~5頁)。
 また、区外の状況をみても、2分の1の按分は市民の理解が得られている。仙台市議会議員の政務調査費をめぐる住民訴訟で、仙台地裁は2017年11月2日、議員の広報紙の作成・発送費用について、按分率2分の1を超えた支出を違法とした判決を下したが、これも2分の1の按分が社会通念上相当であり、市民の理解が得られる割合であることを裏付けている。判決理由は次のとおり述べている。
(以下引用)

ウ 本件要綱に基づく経費の按分について
(ア)本件要綱8条は、本件使途基準に掲げる経費について、政務調査費に係る経費と政務調査費以外の経費を明確に区分し難い場合には、従事割合その他合理的な方法により按分した額を支出額とすることができるものとし、当該方法により按分することが困難である場合には、按分割合について2分の1を上限として計算した額を政務調査費の支出額とすることができる旨を規定している。  
 会派や会派に所属する議員の活動は、調査研究活動以外にも政党活動、議会活動、選挙活動、後援会活動、会派の維持運営のための活動等と広範かつ多岐にわたることに伴い、会派や議員が使用する事務所、事務用品等につき、調査研究活動のための利用とそれ以外の活動のための利用とが事実上混在する場合や、1つの活動が、調査研究としての性格だけではなく、それ以外の性格も兼ね備える場合といった、調査研究活動に係る経費とそれ以外の活動に係る経費を明確に区分し難い場合が存在することが考えられるところ、上記の経費を按分した額につき政務調査費から支出することを認める取扱いは、議員の議会活動の基礎となる調査研究活動のために必要な経費の一部として政務調査費の交付を認めた法の趣旨及び上記の会派の活動の性質に照らして合理的なものであり(略)、当該支出と調査研究活動との間に合理的関連性が要求される本件使途基準にも反しない。
 そうすると、本件訴訟においても、原告による主張立証の結果、一般的、外形的な事実から、調査研究活動以外の活動にも利用されることが推認される経費であると認められた場合には、被告らにおいて、当該経費が調査研究活動のみに利用されたこと、又は、当該経費に関し、調査研究活動に利用された場合とそれ以外の活動に利用された割合について、客観的資料に基づき立証することを要求するものと解される。そして、被告らにおいて、その立証がされた場合には、その全部又は当該割合で按分した額を政務調査費から支出することが許され、その立証をしない場合には、当該経費全体の2分の1を上限として計算した額を政務調査費から支出することは許されるが、その額を超えて支出することは許されず、当該経費全体の2分の1を超える部分の支出は本件使途基準に合致せず違法であると判断するのが相当である。
(イ)これに対し、被告らは、政務活動費の支出について、1つの活動が調査研究活動としての性格とそれ以外の性格を「併せ持つ」あるいは「兼ね備えている」場合は、按分は不要であると主張する。
 しかしながら、1つの活動が調査研究活動以外の性格を含む以上、当該経費には調査研究活動と合理的関連性がない部分が一定程度含まれているのであるから、法100条14項や本件条例1条が政務調査費からの支出の対象を調査研究に必要な経費に限定している趣旨や上記のとおり当該支出が本件使途基準に合致するというためには調査研究活動との間に合理的関連性が要求されることに照らし、調査研究活動に利用された部分とそれ以外の活動に利用された部分が事実上混在する場合と同様に、当該経費が利用された割合に応じて按分した額を政務調査費から支出する必要があり、被告らにおいて、当該経費に関し、調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合について、客観的資料に基づき立証しなければならないと解される。
(以下省略。引用ここまで。甲45、11~13頁)
  
 そして仙台判決は、訴外鈴木勇治仙台市議会議員が政務調査費で全額を支出した広報紙の経費について次のとおり判じている。
(以下引用)

 証拠(略)び弁論の全趣旨によれば、上記のような議員の活動報告等が記載された広報紙を作成して市民に交付する活動は、市政に関する情報を市民に広報する側面を有するものの、一般的、外形的には、自らの議会活動、調査結果を市民に報告することによって支援者を獲得、保持するなどの政治活動、後援会活動としての側面も有すると推認されるから、上記のような広報紙の作成費用は、一般的、外形的な事実から、調査研究活動以外の活動にも利用されることが推認される経費であると認められる。ところが、上記作成費用に関し、調査研究活動のみに利用されたこと又は調査研究に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合について、被告から客観的資料に基づく立証は行われていない。
 そうすると、上記の支出のうち経費全体の2分の1を超える金額である6万3000円(略)が、本件使途基準に合致しない違法な支出と認められ、補助参加人新しい翼の不当利得にあたる。
(引用ここまで。甲45、30頁15行目~31頁6行目)
 
 仙台市においても、社会通念上相当な割合の按分とは2分の1程度であるこの司法判断がなされているのである。つまり、杉並区において、ホームページや広報紙に関する使途基準が、「政務活動費に関する規程」によって「実態に即して按分」と定められている趣旨は、政務活動とそれ以外とを明確に区別するのが本来的に困難な作業であるとの前提に立ち、合理的区分ができることを被告が客観的資料に基づいて立証するなど特段の事情がない限り、社会通念上相当な割合――すなわち上限2分の1程度――の按分をするよう実質的に求めていると解すべきである。

(3)立証責任について
 原告は、政務活動費の支出についての十分な情報を有していない。よってその支出の違法性を具体的に明らかにすることは困難である。一方被告にとっては、適法性を立証することは容易である。使途の透明性の確保が法の趣旨に含まれていることを考えれば、被告が主な立証責任を負うのが当然である。
 先に引用した仙台地裁判決にあるとおりである。すなわち、同判決は「本件訴訟において、原告は、本件各支出の客観的な目的や性質に照らして、当該支出と議員の議員活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性がないことを示す一般的、外形的な事実の存在を主張、立証すれば足り、上記事実が認められた場合は、被告らにおいて、当該支出により市政に関する具体的な調査研究が現にされたなどの特段の事情を立証しない限り、当該支出は本件使途基準に合致せず違法であると判断するのが相当である」と述べている(甲45、12頁14行目~25行目)。

第2 各論 “4月17日15時東京地裁419号法廷/大熊昌巳自民党杉並区議の政務活動費返還請求訴訟、結審予定” の続きを読む