冤罪の疑い濃厚な「倉敷民商事件」

 しばらく東京を離れて中四国地方に出かけていた。27日には広島高裁岡山支部(岡山市)で「倉敷民商事件」の刑事公判を傍聴した。法人税法違反(脱税の幇助)と税理士法違反(無資格で税理士業務を行った)として倉敷民主商工会(倉敷民商)の相談員が岡山地検によって逮捕・起訴された事件である。被告側は一貫して無罪を主張している。

 1審岡山地裁は有罪判決を出し、この日の公判は控訴審の1回目だった。

 調べれば調べるほどに冤罪の疑いが濃厚だといわざるを得ない。詳しくお伝えしたいところだが、税法の専門知識が必要で、かつ込み入っているので、わかりやすく記事にするのは容易ではない。筆者はもっか勉強しているところだ。

・ 民商会員の建築会社が脱税で摘発された。
・ その脱税を幇助した

――という内容だが、これまでの審理で浮かんできたのは、

1 問題の会社は、重加算税を課せられていない疑いが濃く、悪質な脱税だったのか? 
2 帳簿をつけていたのは会社関係者で、民商相談員は年に3度ほど訪問し、確定申告書を仕上げる手伝いをしただけではなかったか。それが脱税幇助、あるいは税理士法違反になるのか?
3 問題の会社の経営者は逮捕されていないのに、民商相談員は逮捕され、長期間(420日以上)拘留された。司法取引をしたのではないか。
 などの疑問である。 

 1審で裁判官が有罪のきめてとしたのは国税査察官K氏の報告書で、これを裁判官は鑑定書として証拠採用した。K氏は民商を告発した張本人であったことから、鑑定人としての資格があるのか大きな疑問があるうえに、その内容も伝聞情報をもとにした部分が多く、弁護側から信頼性を問う主張がなされていた。

 弁護側は、この報告書が鑑定書として無価値であるとした大学教授の意見書を証拠請求していたが、この日の法廷で裁判官は意見書を証拠採用し、即日結審した。一審判決が見みなおされる可能性は少なくないとの観測がなされている。判決は来年1月12日10時半、岡山地裁合同庁舎でもっとも大きい100号法廷で言い渡される。

 こういう専門性が高い事件は一般世論の理解が得られにくく、したがって悪意をもって冤罪を仕立てようとした場合は比較的簡単にちがいない。倉敷民商事件で幸運だと思うのは、全国の民商関係者に税金に関する高度の専門家が多数おり、強力な支援態勢ができあがった点である。傍聴人として感じるのは、裁判官や検事よりも弁護側のほうがはるかに高度な専門知識をもっているという事実である。