家畜人の国を憂うーー斎藤貴男著『ゲンダイ・ニッポンの真相』

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 沼正三著の『家畜人ヤプー』という小説がある。人間を人間の奴隷にすべく、体と精神の改造をほどこすという架空の物語である。ジャーナリスト・斎藤貴男さんの近刊で日刊ゲンダイに連載したコラムをまとめた『ゲンダイ・ニッポンの真相』(同時代社・1800円)を読んで、私は『家畜人ヤプー』の世界が刻々と現実になっているような戦慄を覚えた。

 権力に従順なマスコミ、マイナンバー、憲法破壊・・・アベ政権による国民の扱い方の乱暴さは、まさに家畜扱いというのがふさわしい。

 尊厳を無視した人の扱いに対して怒らない人がものすごい数いる。あるいは、自分より立場の弱い者をみつけてはよってたかっていじめるといった的外れの怒り方しかしない。

 そこに浮かんでくるのは「奴隷根性」である。よらば大樹の陰とばかり、長いものに巻かれたがる。これは国民を家畜扱いする政治に対して、国民の側もまた精神の奴隷化、つまり家畜化が進んでいるということではないだろうか。

 日本社会はいま、自ら米国の植民地になり、自ら進んで奴隷をめざそうとしている。おそらく植民地からの独立を切望してきた体験をもつ社会からみればじつに奇妙にみえるだろう。

 そう書きながら、ふとわれに返る。私自身はどうなのか、知らず知らずのうちに家畜になりつつあるのではないか。

 選挙を前に必読の書である。