「愁」

「愁」

すがれていく草花や
樹々の葉
このように静かにすがれていくことが出来るものなら
すがれてひっそりと在りたいと思う
けれども悪口を言われたら
突然生木のように立ち上がる怒りや
慕わしい人を見ればほんのりと紅潮する血潮
たまった原稿を見れば
新しい詩集へともやす焼けるような意欲
このどうしようもなく生ぐさいものが私なのだ
枯れたりすることが出来るものか
秋の視野をうらやましげに見る
けれども
俗にまみれた傷ましさを
そおっと手のひらにかこって
私は永劫かれることのできない
さびしさである

『記憶の川で』(塔和子、編集工房ノア)より