「世界戦争ははじまっているーー沈黙を破れ」2

 カウンターパンチに掲載された「世界戦争ははじまっている」(ジョン=ピラー氏)という記事のつづきを紹介する。つたない翻訳であるがご了承いただきたい。誤り等ご指摘いただければ幸いである。

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http://www.counterpunch.org/2016/03/23/a-world-war-has-begun-break-the-silence/
March 23, 2016
A World War has Begun: Break the Silence

by John Pilger

世界戦争ははじまっているーー沈黙を破れ(2)

ジョン=ピラー(オーストラリア人ジャーナリスト)www.johnpilger.com

(1)につづく

 アメリカ大統領選挙というサーカスのなかで、ドナルド=トランプは狂ったファシストとして登場した。彼は本当に忌まわしい。しかし彼もまたメディアの悪者なのだ。移民に関するトランプの考えはグロテスクだ。しかしキャメロン英首相の考えほどではない。アメリカで移民の大追放を行ったのはノーベル平和賞受賞者のオバマ大統領であってトランプではない。

 ある著名なリベラル評論家によれば、トランプはアメリカの「暗い暴力性を解き放った」という。暴力性を解き放った?

 アメリカというのは、幼児が母親を撃ち、警察が黒人に対して殺人戦争をしかける国である。また50以上の政府を攻撃し、転覆させた。このうちの多くは民主的な国だった。そしてアジアや中東を爆撃し、何百万人もの死者と財産を失わせた国だ。

 これほどの暴力を行った国はほかにない。アメリカがやったほとんどの戦争(大半は抵抗する力がなかった)は、共和党ではなく、民主党の大統領ーートルーマン、ケネディ、ジョンソン、カーター、クリントン、オバマーーのもとでなされた。

 1947年、アメリカ国家安全保障会議は、アメリカ外交の崇高な目的について「世界を実質的にアメリカのイメージにする」と述べた。メシア的なアメリカのイデオロギーだ。われわれは皆アメリカ人かそれ以外である。異端は改宗され、迫害され、手なづけられ、傷つけられ、つぶされる。

 ドナルド=トランプはこの兆候だが、彼もまた一匹狼だ。彼はイラク侵略は犯罪だといい、ロシアや中国との戦争はやりたくないと言っている。わたしたちにとって危険なのはトランプではなくヒラリー=クリントンのほうだ。彼女は一匹狼ではない。彼女は暴力のシステムに支えられている。彼女が「例外主義」を誇張するのは、リベラルの顔をした全体主義者ゆえだ。

 大統領選が近くなり、クリントンは、そのウソと犯罪にかかわらず最初の女性大統領として歓迎されるだろう。ちょうどバラク=オバマが最初の黒人大統領として賞賛され、リベラルたちが彼の「望み」の矛盾を飲み込んだように。芝居は続く。

ガーデアンのコラムニスト・オーウェン=ジョーンズが「滑稽で、魅力的で、ほかの大統領になかった冷徹さを備えた」と書いたように、オバマはある日、ソマリアに無人機を送り、150人を殺害した。ニューヨークタイムスによれば、火曜になるとたいてい、無人機による殺害候補をわたされ、殺しを行っているという。とても冷酷だ。

2008年の大統領選で、ヒラリー=クリントンはイランに対し、核兵器で「完全に消滅させる」と脅した。オバマ政権の国務長官のときは、ホンジュラスの民主的な政権を転覆させる工作にかかわった。2011年のリビア破壊に貢献したときはほとんどおお喜びだった。リビアの指導者ガダフィ大佐が大衆によって殺害ーーアメリカの計画と準備によって可能だった殺人だがーーされたとき、クリントンは「われわれはきた、われわれは見た、彼は死んだ」と述べ、満悦だった。

 クリントンの仲間の一人にマデレーン=オルブライト元国務長官がいる。ヒラリーを応援しなかったことで若い女性を攻撃した人物である。また、イラクの子どもが50万人死ぬとしても「それだけの代償を払う価値がある」とテレビで語った人物である。

 クリントンの最大の支援組織は、中東の暴力に燃料を注入しているイスラエルロビーと武器産業である。彼女と彼女の夫はウォールストリートから富を得ている。しかし、それでも彼女は、公的な悪たる邪悪なトランプを追い払うという既定路線にのった女性候補なのだ。彼女の支援者には有名なフェミニストがついている。アメリカのグロリア=ステイネム、オーストラリアのアン=サマー。

 一世代前、「アイデンティティ政治」として現在知られる後近代のカルトにより、多くの知的でリベラルな思想を持つ人たちは、自分が支持してきたできごとや人たちを検証するのををやめた。オバマやクリントンの欺瞞しかり、ギリシャのシリザによるニセものの急進運動しかり。かれらは人々を裏切り、彼らの敵とむすんだ。
 
「自分主義」の類にみられる自己陶酔が特権的な西側社会のあらたな時代精神となり、集団による大規模な戦争衝動や、社会の不正義、不平等、人種偏見、性差別をやめる合図を送った。

こんにち、長い眠りは終わったようだ。わかものは再びさわぎだした。ゆっくりと。覚醒の一現象として。イギリスでは何千人もが労働党党首にジェレミー=コービンを押した。バーニー=サンダース上院議員の選挙選もそうである。

イギリスでは先週、コービンの側近で影の財務大臣・ジョン=マクドネルが、海賊のような銀行の債務を帳消しにするよう労働党政府に働きけかけた。要するに緊縮財政を続けるためである。

アメリカのバーニー=サンダースは、もしクリントンが指名されれば彼女を支持すると約束した。彼もまた、「正しい」と考えれば他国に対して暴力を使うことに賛成してきたのだ。オバマ大統領について、「大変よい仕事をした」と述べている。

オーストラリアでは、ある意味死の政治が行われている。難民や先住民たちが訴追され、不平等が拡大するなか、退屈な議会のゲームがメディアを通じてなされ、戦争の危険が迫っている。マルコム=ターンブル政府は、戦争遂行のために1950億ドルの「防衛」予算を宣言した。議論はない。沈黙だ。

政党の縛りから解放された民衆の直接行動という偉大な伝統はどうなったのか。公正で平和な世界をめざす長い旅の末に得た勇気や想像力、行動はいったいどこにいったのか。芸術や映画、劇場、文学による異議申し立てはどこなのか。

沈黙をやぶる人たちはどこにいるのか。あるいは最初の核ミサイルが発射されるまで待てとでもいうのだろうか。

(おわり)