「議員死亡後の期末手当支給は違法」――12万円返還求めて住民監査請求

 2015年2月4日に死亡した杉並区議会議員・大泉時男氏の遺族に対して3月1日時点の在籍を条件として支給される期末手当を支給したのは違法・無効であるとして、奥山妙子前区議会議員と本誌記者が9日、12万円あまりの返還を求める住民監査請求を杉並区監査委員に申し立てた。

 区の条例によれば、3月期の議員期末手当は3月1日の在籍が条件。しかし、辞職・失職・死亡の場合は、1ヶ月前に在籍していれば支給できるとなっている。この「遡及規定」により、大泉議員は3月1日にはすでに故人となっていたのにもかかわらず期末手当が支給された。

 この支給に対して監査請求申立人は、議員報酬と期末手当は職務に対する支給であって、生活を支えるといった「生活給」の意味は皆無であるから、すでに議員が故人となったのちにまで期末手当を支給できるとした条例の規定は違法である――などと主張している。

 ちかく意見陳述の機会がもうけられ、60日以内に監査結果がだされる。結果次第では住民訴訟を起こして裁判所で是非が争われる可能性がある。

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杉並区職員措置請求書
杉並区監査委員御中

2016年3月9日

請求の要旨
 杉並区が前杉並区議会議員・大泉時男氏に対し、2015年3月13日付で支給した同年3月分期末手当12万9564円は違法・不当な公金の支出であるので、杉並区長に対し、杉並区が前杉並区議会議員になしたかかる違法不当な支出により杉並区が被った損害につき、支出相当額の返還を求めるなど損害を填補するための必要な措置及び今後の損害を未然に防止するための条例改正等の措置を講ずるよう勧告することを求める。

請求の原因

(1)大泉時男議員の死亡

 大泉時男区議会議員は2015年2月4日、死亡により議員の地位を失った。

(2)杉並区議会議員の期末手当支給規定
 議員報酬ならびに期末手当について地方自治法はつぎのとおり定めている。

【地方自治法】
・第203条
 第1項 普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、議員報酬を支給しなければならない。
 第2項  普通地方公共団体の議会の議員は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。
 第3項  普通地方公共団体は、条例で、その議会の議員に対し、期末手当を支給することができる。
第4項  議員報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

 杉並区議会議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例によれば、杉並区議会議員の期末手当支給方法はつぎのとおり規定されている。

【杉並区議会議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例】
・ 第8条
 第1項 議長等で3月1日、6月1日及び12月1日(以下これらの日を「基準日」という。)に在職するものに対しては、期末手当を支給する。基準日前1月以内に、辞職し、失職し、除名され、又は死亡した者(当該基準日においてこの項前段の規定の適用を受ける者を除く。)についても、同様とする。
 第2項 期末手当の額は、それぞれ基準日現在(前項後段に規定する者にあつては、辞職、失職、除名又は死亡の日現在)における第2条に定める議員報酬月額及びその議員報酬月額に100分の45を乗じて得た額の合計額に、3月に支給する場合においては100分の25、6月に支給する場合においては100分の155、12月に支給する場合においては100分の163を乗じて得た額に、基準日以前3月以内(基準日が12月1日であるときは、6月以内)の期間における在職期間の区分に応じて、次の表に定める割合を乗じて得た額とする。

 杉並区は3月13日、この規定を根拠にして、すでに故人となった大泉時男氏に対して、3月分期末手当12万9564円を支給した。

(3) 期末手当支給は違法・無効である
 しかしながら、うえの期末支給条例のうち、「基準日前1月以内に、辞職し、失職し、除名され、又は死亡した者についても同様とする」とする規定は、すでに議員職にない者に期末手当を支給する内容であり、地方自治法203条第3項によって付与された議会の裁量権を逸脱または濫用にあたるので違法・無効である。
 杉並区議会議員に支給される議員報酬・期末手当・費用弁償には、生活を支えることを目的とした金銭支給、いわゆる「生活給」としての趣旨はいっさい含まれていない。他自治体における議員報酬をめぐる裁判例や国会図書館専門員の報告が明示するとおりである。
 議員報酬および期末手当は、職務の対価、または職務のために必要な経費等の趣旨にとどまるのであるから、すでに議員職にない者にまで期末手当を支給する理由はない。3月分期末手当支給の条件である3月1日にはすでに議員籍がなかったにもかかわらず、同日に在籍したとみなして支給した金員は、実質的には遺族に対する弔慰金である。期末手当が弔慰金の趣旨を含んでいないのは明らかである。よって請求の趣旨のとおりの措置を求める。

請求者

奥山妙子/三宅勝久