造ったばかりの「あんさんぶる荻窪」を財務省に差し出してあらたに建てたほうが「お得」という子どもだましのインチキ試算


30億円をかけて建築してわずか10年の杉並区営「あんさんぶる荻窪」をこのまま使い続けるより、荻窪税務署の土地と交換して、そこにあらたに38億円をかけて「新あんさんぶる」を建設し、ついでに耐震工事をやったばかりの桃2小学校もこの際45億円で建て直したほうがお得? 

 ーー狐につままれたような奇妙な試算が、24日の総務財政委員会で区によって開陳された。公明党をはじめ計画に賛成する委員らはこの資料をもとに、いかに「財産交換」がお得かを力説したが、その試算とは、素人目にもクビをかしげるような稚拙な内容だ。

 問題の資料とは「財産交換を実施した場合と実施しなかった場合の支出・収入額一覧(2015〜2065年度累計)」と題するA3版のものだ。

GE

A「現行の財産交換の計画を実施した場合」
B「財産交換せずに、公務員住宅跡地(荻窪税務署に隣接する官舎跡地=筆者注)のみを取得した場合」
 の2例を試算し、コストを比べている。

 結果は、Aが約80億円、Bが89億9000万円で、Aのほうが9億円も得だということになっている。

 Aの財産交換とは、区が強引に進めようとしているもので、現在ある「あんさんぶる荻窪」と荻窪税務署+隣接する官舎跡地を等価交換し、新あんさんぶるを新築、さらに児童館がなくなることにともなって桃2小学校も建て替えるという計画だ。あんさんぶる新築費用として38億円、小学校の改築費45億など93億円の収入がある一方、税務署跡地につくる特養ホームの土地賃借料が12億ほど入る。トータルで80億ほどかかるという計算だ。

 B案とは、財産交換をせずに「あんさんぶる」をそのまま使い、特養ホーム用の土地は別途購入するという案だ。当然こちらがはるかに安くなるというのが常人の感覚だろうが、なぜかA案より9億円も高い。理由は「あんさんぶる」の建替えと桃2小学校の建替え経費として80億円を計上しているからだ。50年のうちには、いまのあんさんぶるも建て替える必要がある。桃2小も建て替える必要があるというわけだ。

 一見すると「なるほど・・・」と納得しそうになるが、この比較がいかに意味のないものかは、期間をすこし変えて再計算するだけでよくわかる。A案が想定している新あんさんぶるの建築時期は5年後の2020年。この2020年を起点にして50年間、2070年までの累計収支をみると、結果はぜんぜんちがう。建物の耐用年数を50年として、新あんさんぶるも新桃2小学校も2070年の間に建てなおす必要がでてくる。つまりA案はすくなくとも80億円さらに上乗せになる。一方B案は、2つの建物は2020年ー70年の間においては、それぞれ1度建替えるだけだ。

 ようは、試算の時期をどうみるかによって累計の収支などいくらでもかわる。こんな試算にどんな意味があるのだろうか。

 もちろん、区民からみれば問題はカネだけではない。地域に定着したコミュニティの場を問答無用で奪われるという数字には表しがたい損失がある。そんなコストはこの「インチキ資料」には1銭たりとも数字に表されていない。

 区長なり副区長の意向をくみ、矛盾だらけの計画をゴリ押しするために議会対策としてあわてて作ったのはミエミエだ。あるいは、自民・公明の議員といっしょに練り上げた「策」だったということはないだろうか。

 そううたがいたくなるほど、自公の区に対するヨイショぶりは目にあまった。

 ともあれ、杉並区の知性と行政業務の基礎的な力量を疑わざるを得ない。

 総務財政委員会はインターネット中継も録画もされない。議事録ができるのは数カ月後。はずかしい姿が世に広く知られないのが、杉並区の上級幹部職員や推進議員にとってはせめてもの救いだともいえる。