「財産交換」の一般質問やめてほしいーー杉並区議会事務局が議員に干渉


 
 現在開会中の杉並区定例区議会で一般質問を行おうとした野党議員に対して、特定の質問を取りやめるよう議会事務局が要求していた事実が発覚した。事務局の越権行為は明らかで、民主的な議会運営を脅かすとして批判の声があがっている。

 問題発覚の発端は17日の本会議。一般質問にたった堀部やすし区議は、こうただした。

 先般ある区議会議員が一般質問を通告しようとしたらその質問をさしひかえるよう要請をうけたということがわかりました。当該議員は公序良俗に反する話題を取り上げるわけでもなく、また答弁を担当するわけでもない局長が質問内容に関与する動機はないはずで、なぜそのような横やりを入れてくるのかじつに不可解です。

 本橋正敏杉並区議会事務局長は18日午後、本誌記者の取材に応じ、一般質問のうち特定の質問をやめてもらえないかといった内容の要請を議員に対して行った事実を認めた。

 議会事務局から質問撤回の要請を受けた議員は松尾ゆり議員で、質問とは、現在疑問が噴出中の「あんさんぶる荻窪」と杉並税務署の財産交換問題に関するものだった。本橋事務局長によれば、上程(予定)の議案に関する質問は一般質問で取り上げないという「暗黙の了解」が杉並区にはあり、その慣習にしたがえば「財産交換」問題は一般質問すべきテーマではなく、総務財政委員会でやるべきだと説明し、暗に質問撤回を迫ったという。

 松尾議員は総務財政委員会の委員ではないが、杉並区議会は委員会の委員でなくても質問できるように改革がなされている。

 結局、松尾議員は”忠告”には理由がないとして、当初の予定どおり「財産交換」の質問通告を行い、本会議で一般質問をした。

「議案関連の質問は一般質問で取り上げない」という「暗黙の了解」は、区職員の間では常識だとしても、48人いる議員全体との間で合意されたのではない。すくなくとも松尾議員は認識していなかった模様だ。古い時代になされた自民党など特定の有力会派と区執行部との密約が、一種の「風習」としてつづいている可能性が高い。

「こんごも同様の対応をするのか。質問に介入するのはまちがいではないか」

 記者の質問に対して本橋事務局長は「間違いとは思っていない」と答えた。だが「越権行為ではないか。あるいは仮になんらかの了解事項があったとすれば、それはそれで議会と執行部の慣れ合いだろう。あまりにも緊張感がないのではないか」と指摘すると、「間違いとは思っていない」発言をあらためることはなかったものの、うなづいた。

「一般質問でやらなくても委員会で審議するからいい」

この考えは、仮に執行部と議会全体で合意したとしても、現在の杉並区議会の議会・委員会の中継録画放送の公開状況からみれば多いに問題がある。インターネット中継と録画で即時に視聴できる(録画は24時間後から)のは、本会議と予算・決算特別委員会だけ。あとの委員会は直接傍聴するか、数ヶ月後の議事録公開を待たねばならない。平日の日中に開催される議会・委員会を直接傍聴できる住民はごくわずかである。

 つまり本会議で質問しなければ、仮に委員会でやったところでほとんどだれもわからないという事態をまねく。事実上の密室議会となりかねない。

 この点、本橋事務局長は「(委員会の中継・録画をやるまでの)予算がない」と説明した。だが、昨年12月議会で議員報酬や期末手当を引き上げる条例をやすやすと可決したことを考えると説得力を欠く。

 さて、以上のとおり松尾議員への一般質問に議会事務局が干渉した動機は、表向き、古くから杉並区に伝わる、上程予定議案に関する一般質問はしないという「暗黙の了解」だとされる。だが、はたしてこれが本当の動機なのかは疑問だ。上程予定議案に関する一般質問を行った例は過去にはいくらでもあるからだ。今回の議会でも、堀部議員が非常勤行政委員の報酬に関する質問をしている。裁判で敗訴が確定したのをうけて、今議会に条例改正案が出ている問題だ。これには議会事務局はいっさい口をはさまなかった。

 この点を本橋事務局長にただすと「堀部議員の通告が”区側の敗訴について”とあるだけでわからなかった」と答えた。本当にわからなかったとは思えない。事務局でわからないとしても答弁を担当する部署はいやでもわかっていたはずだ。

 してほしくない質問だったからこそ「暗黙の了解」を口実にして、広く傍聴される可能性のある一般質問をさけようと干渉したのではないか。区長の意向ではないのか。ーーそう指摘したところ本橋事務局長は「そんなことはありません」と否定した。それでも疑いはなおぬぐいがたい。

 取材に対して松尾ゆり議員はつぎのとおり話した。

「過去には減税自治体構想について一般質問をしたり、図書館の民間委託について一般質問をした。いずれも議案関連だったがまったく何もいわれなかった。なぜ今回だけ干渉してくるのか、不可解でなりません」

 なお、堀部氏は議会事務局長の勤務評定にまで切り込んだ質問も行っており、傾聴に値する。

一般質問は広く区政一般について特に議題の制約を受けることなく議員個人の判断で質問できる機会となっていましたが、本会議で自由に発言されることをいやがる区長が存在しているうえ、議会事務局長の勤務評定、勤務成績を副区長がつけていることの悪影響がおよんでおり、あらためて課題の深刻さを実感させられます。・・・副区長が直接議会事務局長や監査事務局長の勤務評価を行うことは二元代表制や監査の独立性を否定する越権行為で違法であります。ただちにあらためなければなりません。

 宇賀神副区長が本橋議会事務局長の勤務評定をつけているという。課題は本当に深刻である。