ジャーナリストはつらいよ――奨学金問題ムラはなぜ私を村八分にしたのか――(2)

 「奨学金」という日本語は、この国ではとてもあいまいな意味で使われています。本来は、学費を無償で提供したり、返還を不要とする資金援助のことをさす言葉です。イングランド語(いわゆる英語)でscholarship,grant などと言われるものです。

 ところが、日本では返還を義務付けられたものも「奨学金」と呼んでいます。利息がつくものが大半で、場合によれば延滞金もつきます。独立行政法人日本学生支援機構が行っている「奨学金」は、いわゆる学生ローンのひとつです。

 学生ローンは学生に対する貸付制度をさす一般名詞です。イングランド語でStudent loanなどと呼ばれています。世界各国で問題になっているものです。

 日本学生支援機構がやっている「奨学金ローン」だけでなく、地方自治体や大学がやっている貸付制度も、本来なら学生ローンとして、一般の金銭消費貸借契約と区別されるべきなのです。

 残念ながら、日本では、無償のものもローンも、ごちゃごちゃにしたまま「奨学金」と呼んでいます。

 なお、「奨学金はローンだ」という声をたまに耳にしますが、それも正確ではありません。私は、政府や支援機構が意図的にあいまいな言葉を好んで使っているのではないかと疑っています。

 支援機構のイングランド語の案内冊子には「Scholarship loans」(奨学金ローン)と書かれています。ですので、私は、「奨学金ローン」ということもあります。学生ローンとしての「奨学金ローン」という商品ということです。

 ともかく、奨学金では断じてないことはもちろん、ふつうのローン(金銭消費貸借契約)ともあきらかに異なる貸し付け制度なので、はっきり区別することが重要です。

 さて、日本学生支援機構の学生ローン「奨学金ローン」について、最大の問題だと私が思っているのが「一括繰り上げ請求」です。それを理解いただくには、もう少し説明が必要です。

 奨学金ローンは、在学中に月々数万円程度の資金を貸し付け、卒業後(退校後)、20年以内で「返還」するという制度です。ローンですが、通常のローンと大きな違いがあります。

 1 返済能力をいっさい考慮せずに数百万円の貸し付けが行われる
 2 「期限の利益」の概念がない=延滞した場合、全額一括返済をしなくてもよい。 

 最大の特徴はこの2点だと私は考えています。

 まず1について。

 ふつうの貸し付け(金銭消費貸借)の場合、かならず返済能力について審査が行われます。返済能力を超えて貸し付けることは法令で禁止されています。未成年や若年の学生は、返済能力がないか乏しいのがふつうですので、たとえば銀行や貸金業者に融資を申し込んだところで何百万円も貸してくれることはまずありえません。

 保証人を要求されるのが通常ですが、その保証人の返済能力も審査されます。
 
 奨学金ローンは、資金があるかどうかをいっさい調査せずに貸してくれる制度です。保証人をつけることもありますが、その場合も、保証人の返済能力は不問です。

 金がないのをわかっていて貸し付ける、ないことを前提に貸し付ける公的制度といえます。学問の機会均等を保障するというのが制度の目的です。

(つづく)
●ジャーナリストはつらいよ(1)
●ジャーナリストはつらいよ(3)

投稿者: miyakatu

ジャーナリスト

「ジャーナリストはつらいよ――奨学金問題ムラはなぜ私を村八分にしたのか――(2)」への2件のフィードバック

  1. 三宅さん、Student loanのStuden〈t〉が抜けてます〜
    それにしても、なぜ「奨学金問題対策全国会議」は一括繰り上げ請求の問題を扱わないのか?この書面を読んでも合理的な理由が書かれておらず腑に落ちませんでした。
    違法性があり一番の被害をもたらしている問題をこうまでして避けるとなると、
    なにか不都合なことでもあるのかと勘ぐってしまいます。元より異論を排除するのでは「会議」の意味をなさないのではないでしょうか。

    1. ご指摘ありがとうございます。
      本当に奇妙です。ひきつづき応援よろしくお願いします。

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