「日本の極右はなぜオリンピック停戦を憎むのか」ジョセフ=エゼティエル(その1)

 カウンターパンチから名古屋工科大准教授エサテイエ=ジヨセフ氏の論文「日本の極右はなぜオリンピック停戦を憎むのか」を抄訳して紹介します。なお翻訳の責任は訳者にあります。
  
https://www.counterpunch.org/2018/02/23/why-japans-ultranationalists-hate-the-olympic-truce/
Joseph Essertier

2018/02/25 09:43
「日本の極右はなぜオリンピック停戦を憎むのか」ジョセフ=エゼティエル

「北朝鮮を過去から現在につづく脅威に仕立てることは、日本の安倍晋三総理大臣と彼を取り巻く極右の政府高官たちが国内をまとめるのに都合がよい。ここ最近におけるワシントンとピョンヤンの緊張状態によって世論の目は外敵に向けられ、安倍政治は日本にとってよいのだという安倍総理の描いた筋書きを支えるのに役立っている」

 この文章は、CNNの記事をもとにして登場人物を入れ替えたものだ。
 なぜ安倍と彼を取り巻く極右たちがオリンピック停戦を嫌悪し、最大の圧力=言い換えれば、虐殺的な制裁と朝鮮半島で再び大量殺人を起こすぞという脅し=を通じて南北が和平するのを邪魔しようとするのか、その5つの理由を以下に述べる。

1 親族の名誉

 安倍内閣の極右大臣たちーー2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えているがーー、彼らの祖先は日本が帝国時代だったときに大きな利益を享受している。祖先たちは朝鮮人や中国人、そのほかの人たちを拷問し、殺し、搾取した。この祖先の「名誉」を彼らは回復したがっている。現在の総理大臣である安倍晋三は岸信介の孫にあたる。岸はA級戦犯でからくも死刑から逃れた人物だ。東条英機の忠臣である。ふたりの関係は1931年にさかのぼる。満州を植民地支配し、資源と人を収奪した。自分自身と帝国の利益のために朝鮮人と中国人を強制労働させた。満州で岸が確立した奴隷制度は、軍による性取引に道を開き、日本・朝鮮・中国ほかの国の女性たちが人身取引された。

 現財務大臣の麻生太郎も岸信介と関係がある。裕仁天皇の甥(三笠宮寛仁)と自分の妹(信子)が結婚するという形で皇室とつながっている。戦争中、朝鮮人の強制労働による搾取で巨大な鉱山利潤が築かれたが、彼はその遺産の継承者である。麻生の法律上の兄弟で2020年東京五輪担当大臣の鈴木俊一もまた極右で歴史否定論者である。

 南北朝鮮の多くの人たちは、過去と現在の極右の人たち、つまり自分たちの祖先を拷問した者たちのことをとてもよく理解している。朝鮮に関する歴史家であるブルース=カミングスは、冗談まじりにこう述べている。

「ピョンヤンが共産主義の遺産に苦労する一方で、日本は民主主義の遺産に苦労している」

2 差別主義者による否定主義、歴史修正主義
 
 安倍内閣の多くの閣僚は日本会議の会員だ。安倍、麻生、鈴木、東京都知事で元防衛大臣の小池百合子、厚労大臣の加藤勝信、防衛大臣の小野寺五典、菅義偉官房長官。日本会議は草の根の運動に支えられ、潤沢な資金をもった団体だ。「東京裁判」史観をひっくりかえし、平和を追及する例のない憲法9条を削除するよう主張している。「戦争は国家の主権であり、国際紛争を解決する手段である」と公言している。1910年の日韓併合は合法的だったとも主張している。

 麻生太郎はトランプ大統領と同じで、あけすけで露骨な差別主義者だ。弱者への攻撃をそそのかす。彼は「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」とのべた。

 昨年は小池都知事が象徴暴力※をつかって朝鮮人攻撃を行った。1923年の関東大震災時の混乱時におきた朝鮮人虐殺を追悼する式典に追悼文を送ることを中止した。地震のあと、朝鮮人が井戸に毒を入れたなどといったデマが東京にひろがり、差別主義者の自警団らが何千人もの朝鮮人を殺害した。罪のない犠牲者を悼む式典は何十年も続いてきた。しかし朝鮮人の苦難を理解しようとするこの伝統を終わらせようと企てることで、彼女もまた、差別主義者らから力を得ている。一方差別主義者たちは北朝鮮からの嘘の「脅威」によって力を得ている。

※象徴的暴力(Symbolic violence=社会学の概念で、支配者が支配の正当性を被支配者に受けいれさせる手段という意味か。訳者注)

3 日本の軍事化をさらに進める

 日本は平和憲法をまだ持っているが、他国を脅かすだけの軍事装置を築きつつある。現段階での日本の軍事予算は韓国よりわずかに大きく、世界で8番目に「すぎない」。防衛支出の意味に限れば。安倍はさらに軍隊を強くし、軍国化をして、かつて1930年代の栄光を取り戻そうとしている。すくなくとも彼の心のなかでは。

 韓国と日本は絶えず米国とともに戦争ゲームを行ってきた(婉曲的に「合同軍事演習」と表現されている)。安倍はトランプと同様に、五輪が終わり次第、できるだけ早くこの戦争ゲームを再開しようとしている。「コープノース」(北岬)と呼ばれる戦争ゲームが、2月14日から3月2日まで、日本と米国、オーストラリアの参加によってグアムで行われている。「アイアンフィスト」(鉄の拳)戦争ゲームが米国と日本によって南カリフォルニア州で行われており、2月7日に終わった。世界最大級の戦争ゲームは米国と韓国による軍事演習「キーリゾルブ・フォウルアンドイーグル」(子馬と鷹)だ。昨年、これらの演習に韓国兵30万人と米兵1万5000人のほか、オサマ=ビンラディンを暗殺した特殊部隊「SEALチーム6」が参加した。B1―B超音速爆撃機とB-52核戦略爆撃機、航空母艦、原子力潜水艦が投入された。軍事演習は五輪停戦によって延期されたが、もしムン=ジェイン韓国大統領が中止するか、再延期をしない限り4月には再開するだろう。

 韓国は現在は主権国家であるから、ムン大統領は「凍結のための凍結」の合意を行う権利をもつ。彼の政府が攻撃的な軍事演習を棚上げにし、北朝鮮がそれに対して核兵器の開発を凍結するという合意である。

 日本が国際社会において存在感を示し得るひとつの方法は、核兵器を持つことだろう。北朝鮮が持っているのになぜ日本にないのか。キッシンジャー元米国国務長官が最近こう発言した。

「北朝鮮のような小さな国は極端な脅威ではない」

 しかし北朝鮮が核兵器を持ったいま、日本と韓国も核兵器を欲しがるようになってしまった。それこそが問題なのだと第1級の帝国主義者であるキッシンジャーですら考えているのだ。
 
 日本と韓国のこの攻撃的兵器(核)に対する欲求をトランプ米大統領は刺激している。フォックスニュース・クリス=ウオーラスのインタビューでこうはなしている。

「日本もおそらく可能だ。じっさい北朝鮮の脅威から自分で自分を守るほうがいい」
「核武装も含めてですか?」
「核も含めてか? そうだ。核兵器も含む」

 CNNのジェーク=タッパーが後にこのやりとりを再確認している。そして2016年3月26日のニューヨークタイムスは、トランプ大統領候補=当時=が、「中国と北朝鮮から守るのに米国の核の傘に頼るよりは、日本と韓国が自分で核兵器を開発することを認めたほうがよい」(記事本文)と報じた。

 世界の非核兵器国家のなかで、日本ほど核の能力を持っている国はない。東京政府は数ヶ月で核兵器を作れるだろうと多くの専門家は分析している。混乱(日本が核武装する事態の意味?)につづいて、おそらく韓国と台湾が核武装するだろう。台湾はひそかに日本から核の支援を受けている。小池都知事も2003年、日本が核武装することを容認する発言をした。

4 選挙に勝つ

安倍や麻生ら日本の極右の人たちには、朝鮮半島が和平になると、「脅威」によって維持してきた権力が失われる。だからたいへん都合の悪いことなのだろう。

 麻生自身、昨年11月に自民党が選挙で勝ったのは北朝鮮の脅威のおかげであると認めた。これは後に口がすべったとして撤回させられた。

 極右教育を行う私立小学校をめぐる汚職によって安倍政権はゆらいできた。しかし巨大で邪悪な体制による「脅威」のほうに関心がそらされ、有権者はより安全で親近感のある自民党を選んだ。

 この小学校のために国有地が7分の1の価格で売却されており、汚職は明白だった。しかし外国の「脅威」のおかげで彼は権力を維持することができた。(汚職で)罷免された南朝鮮のパク・クネ大統領のようにはならなかった。

 安倍は、「北朝鮮が日本を標的に、サリンを搭載したミサイルを向けている」と多くの人に信じさせることに成功した。サリンは1995年にカルト集団「オウム真理教」が地下鉄で使い、何十人もの死者を出した。以来日本人を怯えさせている。加えていま行われている「J-アラート」警報をつうじて、北朝鮮の実験ミサイルが日本に着弾するかもしれないとして北日本に住む数百万人に避難壕へ逃げるよう助言がなされている。私たち日本に住む者にはうるさいことだが、安倍のような極右にとってはこれとない安価な宣伝になっている。

5 「しー」 もうひとつの世界が実現できることを誰にも言うな。

 重要なことを最後にいいたい。北アジアが独自の発展をとげることは大いなる脅威であるとして、ワシントンだけでなく、ワシントンシステムに依存する東京も悩んでいる。

 米国が支配する世界システムの外側において、中国は大きな成長をとげた。北朝鮮も完全に米国システムの外で発展してきた。そしていま、ムン韓国大統領は、米国にできるだけ依存しない独自のあたらしい経済構想を進めようとしている。

 あたらしい構想は「新南方政策」「新北方政策」と呼ばれる。

 前者(新南方政策構想)は、南朝鮮が北朝鮮と良い関係をもっているインドネシアと貿易関係を深め、後者(新北方政策構想)ロシア、中国、そして北朝鮮ともより貿易を盛んにするというものである。

 たとえば、南朝鮮から北朝鮮を経由してロシアまでインフラを新設し、そのかわりに北朝鮮の核兵器開発を凍結するという計画がある。

 また、南朝鮮の経済を、近隣諸国である中国や日本、モンゴルと連携させていこうとする議論も進行中だ。

 2017年9月7日にロシアのウラジオストックで開催された東経済フォーラムでムン南朝鮮大統領は、プーチン・ロシア大統領の計画について、「9つの協力の橋である」と述べた。すなわちガス、鉄道、港湾、電気、北方海路、造船、仕事、農業、そして漁業である。

 かつての、あるいは現在の共産主義国家である中国、北朝鮮、ロシアと、ムン南朝鮮大統領の経済構想は、「門戸開放政策」−ーつまり、貪欲で独占的なアメリカの非生産階級ーー(オキュパイ=占拠運動=)において「1%」と表現された人たちーーの物質に対する幻想を厳しく制約し得る。

 ポール=アトウッドはこう説明している。「門戸開放政策」という言葉をこんにち使う政治家は多くないが、なお「アメリカの根底にある戦略が外交政策をおおげさなものにし続けている。全地球に適用し得るるこの政策とは、巨大な中国市場(現在は巨大な東アジア市場)に対するものである」

 アトウッドはこれを「アメリカの金融と企業が、あらゆる国と領土に自由に入って資源と安い労働力を手に入れることができる。ときに外交的にそれを行い、しばしば軍事力も使う」という概念として定義する。

 北アジアの国々が独自に経済発展をすることによってアメリカの労働者は困らない。それどころか、米国の企業が労働者と天然資源を搾取することを防止できる。東アジアは世界でももっとも豊かな可能性のある場所である。ロシア経済に利益をもたらす。ロシアは米国に匹敵する国だが、発言力はさらにましていくだろう。

 ワシントンのエリートの視点でみれば、われわれはいまだ朝鮮戦争に勝っていない。

 北朝鮮が独自の発展を遂げ、高性能の核兵器を所持した国であると見なすことができないでいる。

 これは悪い前例なのだと考えている。つまり、他国が北朝鮮にならって、堂々たる近代化と独立を遂げるというのが「脅威」なのだ。

 ガキ大将国家の「ドン」が近隣国に対して「絶対に許さない」といっているようなものだ。

 北朝鮮はすでに、米国が支配するグローバル(地球規模)システムの外側に、かつての「共産」国家であった中華人民共和国と旧ソ連の支援をうけ、発展をとげることに成功している。

(「共産主義者」という言葉はしばしば、独立した発展を目指す国としてつかわれる)

 そして北朝鮮は、70年間アメリカ企業に市場を開放せずに、独立してきた。

 これはワシントンの側にすれば棘でありつづけた。マフィアのドンのようなものである。米国のドンにとって重要なのは「信用」である。しかし北朝鮮の存在はまさにそれを傷つけている。

 なぜ安倍がマイク=ペンス副大統領と肩を組み、朝鮮半島の平和行進の上に「雨」を降らせるのを助けようとするのか。それを説明するのが、上にのべた5つの理由である。
(つづく)

★「日本の極右はなぜオリンピック停戦を憎むのか」(その2・最終回)

投稿者: miyakatu

ジャーナリスト

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