「イラク戦争の欺瞞」と競馬新聞としての朝日新聞

 朝日新聞朝刊のトップニュースは「改憲与党3分の2に迫る」という世論調査である。こういう事前調査を大々的に報じるのは人気投票を禁止した公職選挙法違反ではないかと常々疑問に思ってきた。朝日新聞は、個々人の記者の考えや実践は別にして、企業としてみれば自公政権につづいてほしいということなのだろう。そうでなければ、こんなニュースを流す意味がない。

 あるいは戦争になってほしいという気持ちがあるのかもしれない。新聞が売れるし、兵器産業が潤って広告収入があがる。1937年12月、南京陥落のスクープ合戦に酔った新聞のひとつに朝日新聞があった。

 読者が必要としているのは政治家をえらぶための判断材料であり、その材料とは何よりも政治姿勢だろう。自分以外の多くの人がどういう候補や政党に投票するかというのは結果である。

 改憲与党3分の2に迫るーーという世論調査は、選挙をやるまえから結果を予測していることになる。予測があたるかどうかを競うようなもので、まるで競馬新聞である。

 うちの新聞はよく当たるよーーとでもいいたげなくだらない紙面である。

 じつは「3分の2に迫る」よりも、選挙を目前にしたいま、はるかに重要なニュースがある。連合王国(UK=いわゆる英国のこと)のイラク戦争調査報告書が発表されたというニュースである。

 2003年3月の米主導のイラク侵略戦争に、連合王国も軍を派遣した。大量破壊兵器の開発をやめていないという理屈だったが、それが真っ赤なウソであったことが報告書でも明らかになっている。ブレア元首相を弾劾手続きに付するべきだとの声も出ているほどの大騒ぎになっている。

 報告は大部のもので、要約だけでも150ページもある。イングランド語に堪能な方がいらっしゃれば、ぜひ早急に翻訳してほしい。

http://www.iraqinquiry.org.uk/the-report/
 ガーディアン紙電子版に要点がまとめられているので紹介しよう。
https://www.theguardian.com/uk-news/2016/jul/06/iraq-inquiry-key-points-from-the-chilcot-report

1 (連合王国)政府は、平和的解決手段を尽くす余地がありながら軍事侵略参加を選択した。

2 故意によってブレア首相はフセイン政権の脅威を誇張した。

3 「何があっても私はあなたについていきます」とブレア首相はブッシュ米大統領に約束した。

4 法的解決が不十分なままで軍事侵略の決断がなされた。

5 侵略後のイラクの扱いに関する連合王国の助言(国連の関与など)をブッシュ政権はとことん無視した。

6 サダム政権によるさしせまった脅威は存在しなかった。

7 連合王国の情報機関は「欠陥のある情報」を創作した。

8 連合王国軍の装備は十分でなかった。

9 イラク戦争に参加しなくても対米関係が悪化することはなかった。

10 イラク侵略後におきるであろうことに関する警告をブレア首相は無視した。

11 イラク侵略後の戦略を政府はもっていなかった。

12 侵略後の米国主導によるイラク行政について連合王国は影響力を持ち得なかった。

13 連合王国はイラク侵略の目的を達成できていない。

14 政府はイラク市民の死者について数を数えるのを断念した。

 ブッシュ大統領にしがみつくようにしてイラク侵略戦争に自衛隊を送り出した小泉政権もまた、これと同様か、あるいはもっとむちゃくちゃな背景があったのではないかと筆者は想像する。

 残念ながら国会を自公+補完勢力が占拠したままでは真相解明は期待できない。朝日新聞の経営者とそのお気に入りの社員たちも、「3分の2」などといった競馬新聞的紙面をつくっているようでは、真相などには興味ないのであろう。

投稿者: miyakatu

ジャーナリスト

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