不動産業者との「癒着」に関する質問の対応を役所におしつける田中良杉並区長の無責任


 取材として田中良杉並区長に出した質問状が本人の手にわたったかを確認するのに10日もかかった。しかも回答のメドは「わからない」。そんな奇妙な現象がおきている。区民に対する説明責任を果たそうという意識が日々薄くなっていることを象徴する出来事だ。

 さる13日、本誌記者は田中良氏にあてて、不動産会社武蔵商事社長で報酬審議会会長の宇田川紀通氏との「癒着疑惑」について質問状を出した。

「宇田川報酬審会長の不動産会社に杉並区の税金から年間2800万円が支払われていた」

「杉並区長の政治的支援者が7年にわたって報酬審会長に居続ける異常」
 質問の提出先は総務課(都筑公嗣課長)。受け取ったS課員は「区長は忙しいのでわたせるかどうかわからない」などと答えた。「区長にわたったら連絡してほしい」と筆者はS課員に伝え、S課員は了承した。

 ところが総務課から連絡はなかった。やむなく質問から10日がたった22日朝、 記者は総務課に電話をかけ、事情をただした。対応したS課員は「秘書課にわたした」と答えた。「いつ秘書課にわたしたのか」とただすと「それも含めて(質問への答えを)文書で回答する」などと言った。その回答も、いつのことになるのかはわからないという。

 あまりにも対応がふざけていないか、いつ秘書課にわたしたのかくらい答えられるだろう。そう批判したところ、S課員はようやく「14日に秘書課にわたした」と答えた。

 秘書課まで質問状がいったことは確認できた。しかし、さらにそこから先、区長自身の手に届いたかどうかはなおも不明だ。そこで確認するため、杉並区役所の代表電話を通じて秘書課に電話をかけた。交換手はしばらく保留にしたのちにこういった。

「秘書課はおつなぎできません。区政相談課におつなぎします」

 着信拒否である。相談課の職員に対して記者は、秘書課(林田信人課長)に聞こうとした内容をつたえ、あわせて「着信拒否の理由を秘書課に聞いてほしい」と「相談」した。ついでに、田中区長は説明責任を果たすべきではないか、と意見し、電話を切った。

 区政相談課の職員から折りかえし電話があったのは上のやりとりから数分後であった。「秘書課で対応するので電話を転送します」とのことであった。転送された電話に最初にでた秘書課の課員は、この通話が秘書課のほうから求めたものだったとの認識がなかったようで、「いま担当者が電話中なので折りかえしかけてもいいですか」と変な言い方をした。

 まもなく電話口に出た秘書課の男性O課員はこう説明した。

 「質問状は総務課から秘書課に、14日の夕方に伝わった。区長にも内容は伝えた」

 記者はたずねた。

 「それで、回答はいつもらえるのでしょうか」

 O秘書課員は答える。

 「わかりません」

 「わからないとは」

 「総務課で回答案をつくるので秘書課ではわかりません」

 奇妙な話ではないかと記者はおどろいた。質問は総務課だけで答えられる内容ではない。田中良氏個人の問題が含まれている。つまり――田中氏の政治資金パーティの発起人になっている宇田川紀通・武蔵商事社長という政治的支援者を、田中氏自身の権限をつかって報酬審議会委員に委嘱。さらに武蔵商事と区との間に不動産の賃借契約をむすび、年間2800万円を支払っている。報酬審は昨年11月、区長ら特別職の報酬・期末手当を引き上げるべきだという答申をだし、それをうけて引き上げの条例改正がなされた。――癒着・腐敗、そういうほか表現のしようがない問題である。

 区政の問題であることは当然だが、それだけではない。区とは関係がない田中氏個人、あるいは政治家田中良としての立場がからんでいる。公私をごちゃまぜにしているからこそ問題なのだ。

 それを総務課だけで答えるという。政治家田中氏にかかわるところも、総務課が税金をつかってかわりに答えてやるということらしい。その回答行為自体がけじめなき公私混同の発想ではないだろうか。

 「総務課で答えるというのは田中区長の指示ですか」
 
 O課員に記者はたずねた。

 「いえ・・」

 O秘書課員は口をにごした。

 「総務課で答えるということで田中区長は了承しているんですね」
 
 「はい」

 「区長の指示ということではないですか」

 「・・・」

 ともあれ、ここにきてようやく田中区長に質問が届いている事実を確認することができた。10日を要した。「区長は取材の質問もわたせないほど忙しいんですか」と記者はきいた。

 「出ていることが多いので、とくに1月は、新年会とか…」

 「しかし、質問をわたせないほどじゃないでしょう」

 「ええ、まあ…」

 ともあれ回答だ。うやむやにされてはたまらない。ふたたび総務課に電話をかける。”会議”で課長もほかの職員もいない。「1時くらいにかけてもらえますか」と対応した職員は言った。正午まで10分ほどあった。昼めし抜きで会議とはよほど忙しいらしい。もっとも総務課の答えは予想がつく。回答がいつできるか「わからない」だろう。

 かくして、区長と地元有力業者の癒着という区民にとって重大な関心事にかんして、区長の説明を現在もなおあてもなく待ちつづけることを余儀なくされている。

 ほんらいなら議会が追及すべき場面である。しかし、山田宏区政時代は野党の立場にあり、厳しい批判をしばしば展開していた非自公議員らは、民主党出身の田中区政(2期目は自民の支持を得た)になったとたん、まるで牙をぬかれたかのようにおとなしくなってしまった。自公や自公補完勢力の議員らも厳しい目でチェックするでもなく田中区長の言いなりになっている。あるいは区長のほうが自公の言いなりになっているのかもしれない。

 かくして大政翼賛状態のなか、田中区政の独裁化、密室化、無責任化が進んでいる。

追記(22日13時半)

 総務課にあらためて確認したところ対応したS課員は「現在調整しながら回答をつくっている。はっきりとはわからないが1-2週間はかかるだろう」と答えた。

 

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問題の質問状
 
ご質問

田中良杉並区長さま

前略 以下、取材として質問いたします。

① 武蔵商事株式会社、または同社代表取締役・宇多田川紀通氏、またはその親族に、田中区長を政治的に支援することを目的とした政治団体が主催する政治資金パーティのパーティ券を購入してもらったことはありますか。

② 武蔵商事株式会社社長・宇田川氏は、田中区長を政治的に支援することを目的とした政治団体が主催する政治資金パーティの発起人になったことがあります。また、武蔵商事と杉並区の間には、保育室用の不動産物件や駐輪場の賃貸借契約が交わされており、年間約2800万円の支払いがされている事実が確認されています。
 
 こういう区と利害関係をもち、かつ政治的に区長と密接な関係のある企業経営者が、区報酬等審議会の会長になり、昨年11月に、特別職職員や議員の報酬・給料・期末手当の引き上げを答申したことについて、宇田川氏を報酬審の委員に任命することは区政と一部業者との癒着であり、不適切ではないかとの批判が多数の区民によってなされています。

 つきましては、宇田川氏を報酬審委員に任命し、会長となった経緯、およびこの人選を不適切だとの批判にたいしてどうお考えになるのか、ご意見を聞かせてください。

以上

2016年1月13日
三宅勝久 ジャーナリスト

投稿者: miyakatu

ジャーナリスト

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